「大丈夫大丈夫。ここのブランド、オシャレなのに割と安いの。それに、この前バイトの給料も入ったばっかりだし」
 「でも・・・」
 「ん〜、なら、コンタクトにする記念ってことで!」
 「どんな記念・・・(笑)」
 今日の里穂は一段と押しが強い。
 ここまで言っといてもらって、断り続けるのも悪い気がして私は袋を受け取った。
 「絢花にコンタクトを勧めたのも元はと言えば私だからね。それに、コーディネートするのも楽しかったし」
 「ありがとう」
 「次遊ぶときは、その中から選んで服着てきてね」
 「わかった」
 里穂の言葉にうなずく。
 それを見て、里穂も満足そうに微笑んだのだった。


 他にも買い物をしたり、適当なカフェに入って雑談したりと久しぶりの里穂との時間を満喫して数時間。
 これから里穂のバイトのシフトが入ってるらしくて、若干の名残惜しさを感じながら私たちは別れた。
 とはいっても、里穂はシフトが例の彼氏さんと被ってるようで少しウキウキしていたけど。
 本当に、青春してるって感じだよなぁ。
 一人になって、私はこれから特に予定もないのでゆっくり歩く。
 だいぶ時間が経った事もあって、来たばっかりのときよりも人の量は落ち着いていた。
 それにしても、楽しかったな。
 また今度遊ぶ約束もしたから、次の日が待ち遠しい。
 そういえば、まだ里穂って椿ちゃんに会ったことないよね。
 今度紹介するって言っておきながら、その今度がなかなか実現していない。
 いつか、椿ちゃんも誘って3人で遊びに行きたい。
 椿ちゃんはすごくいい子だし、きっと里穂も椿ちゃんのことを気にいるはず。
 もしかしたら、椿ちゃんも、今日の私みたいに着せ替え人形になるかも?
 なんて、考えていると。
 「絢花」
 私の名前を呼ぶ声が背後から聞こえた。
 その声の主に心当たりがあって、私は勢いよく振り向く。
 「郁弥くん!」
 「久しぶり、絢花」
 そこには、予想通りの人が立っていた。
 彼は、私の従兄弟の郁弥くん。
 郁弥くんはThe・好青年というような風貌をしている。
 その姿は、私の記憶の中にある郁弥くんまんまだった。
 「どうしてここに?」
 「ごめんごめん、絢花には連絡してなかったな。この休みに帰ってきててさ、今日はこっちの友だちと遊んでたとこ」
 「そうなんだ」
 現在、大学生の郁弥くんは伯母さんたちの家から少し離れたところにあるマンションの一室を借りて一人暮らしをしている。