近づいちゃダメってことだよね?
 危険な人たちなのかな。
 まさか、ヤンキーとか・・・!?
 「あのね、その『二人』っていうのは黒江魁吏(くろえかいり)真白晶(ましろあきら)のことなの」
 「・・・黒江魁吏?」
 黒江魁吏って、あの黒江魁吏のことだよね?
 壁を蹴ってお礼を言おうとした私に「ブス」とまで言った黒江魁吏。
 「二人の関係については私も詳しくは知らないんだけど、幼馴染らしいの」
 「へぇ〜・・・」
 「真白晶から説明する」
 「よろしくお頼み申しまする」
 私がそう言って軽く頭を下げると里穂は「何よ、その日本語」とカラカラと笑う。
 「真白くんは一言で言うなら紳士。男子にも女子にも優しく接していて、人気があるの。顔もイケメンで女子の間では“白馬の王子様”って呼ばれたりもしている」
 「そうなんだ」
 黒江魁吏とは対照的な性格ってことだね。
 あいつには優しさのかけらもなかったし。
 「で、黒江魁吏は真白くんとは正反対の無愛想な性格。口調もきついしね。でも運動神経も良いし顔も良いから女子にかなりモテる。あそこまで行ったら、無愛想なその性格でさえもモテる一つの要因になってるのかも」
 「ふーん・・・。なんで、私はその人達に近づいたらダメなの?」
 黒江魁吏に近づいちゃダメならわかるんだけど。
 話を聞いている限り、真白晶っていう人は良い人なんでしょ?
 もちろん、私から近づくことはないと思うけどそこまで近づいたらいけない理由がイマイチわからないよ。
 「なんでって、そんなの決まってるじゃない。二人の人気を舐めてたらダメだよ。ちょっとでも親密になろうものなら怖い怖い女子に絢花がイジメられるかもしれないから」
 「ああ、なるほど」
 こんな地味子がそんなに騒がれるほどイケメンな人たちに近づいたなら反感を買うに決まっているよね。
 里穂くらいの美少女ならまだ受け入れられそうだけど。
 「まあ、私から近づくことはないから安心してね」
 「近づいたらダメとまでは言わないけど。仲良くするにしても周りにはバレないようにしなさいってこと。わかった?」
 「はーい」
 私の素直な返事を聞いて、里穂はホッとしたような様子。
 「でもどうして絢花がそんなこと訊いてくるの?」
 「あー、実は・・・」


 「ねえ、絢花」
 「ん?」
 私はさっき女子に言われたこと全てを里穂に話した。
 全部言うつもりじゃなかったんだけど、里穂に「なんて言われたのか詳しくいいなさい」って言われちゃって・・・。