「いいじゃない!」
 「お客様、よくお似合いです〜!」
 ・・・・・・あれ?
 思っていた反応とだいぶ違うぞ?
 いや、だいぶどころか180度違う。
 もっとこう、反応に困る感じというか・・・。
 眼鏡を外しているから二人の顔まではよく見えないけど、何故か両者テンションが高いことは伝わってくる。
 「流石、絢花ね。じゃあ次はこれ着て」
 「え、ええ?わかった・・・」
 私が着替えている間に他の服を見繕って(みつくろって)いたのか、新しい服を強引に渡される。
 そして、またカーテンが閉まる。
 なんだかわからないけど、里穂が楽しそうだったからまあいっか。


 ・・・なんて、私の考えは甘かった。
 試着をして、里穂に見せるたびに新しい服を渡されて。
 最終的には店員さんも里穂と一緒にコーディネートしてる感じだったし。
 ざっと数えても十着以上の服に袖を通したと思う。
 忙しすぎる着せ替え人形。
 里穂は店員さんと意気投合してキャッキャしてた。
 初対面の人ともすぐ話せるのは純粋にすごいと思う。
 自前の服に着替えて、眼鏡をかけて試着室から出る。
 かなり長い時間使用してたけど、大丈夫だったかな・・・?
 「・・・って、あれ?里穂は?」
 カーテンの向こう側に里穂はいない。
 自分の服を選んでるとかかな?
 私の服選びばっかりで里穂の服は全然見れてなかったよね・・・。
 里穂がどこにいるのかわからない以上、下手に動くのもまずい気がして一旦試着室の近くで待機することにした。
 そういえば、私が試着した服たちはどうなったんだろう・・・?
 「絢花、お待たせ」
 「おかえり。どこに行ってたの?」
 すぐに里穂は帰ってきた。
 そして、その手にはブランドのロゴが描かれた大きな白い袋が下げられている。
 里穂は私の質問には答えず、その袋を私に渡す。
 その中には、三着ほど服が入っていた。
 「これ、さっき試着した服・・・?・・・え、里穂まさか」
 「試着した中でも特に似合ってたのよ」
 「お金は・・・」
 もうお会計したとか言わないよね・・・?
 恐る恐る里穂の顔を見る。
 「お金なんていらないわよ。これ、絢花へのプレゼントだから」
 「ええ!?」
 プレゼント!?
 どうしてまた、急にそんなこと?
 それに、これだけの服、結構な値段したんじゃ・・・。
 心配の色がわかりやすく顔に表れていたのか、私の顔を見て里穂は笑った。