そのまま、近くの服屋さんに入っていってしまった。
 里穂を見失わないように、早足で人混みを掻き分けて歩く。
 「里穂、ちょっと待ってよ」
 「う〜ん、絢花にぴったりな服でしょ・・・。いっぱいありすぎる」
 一足先にお店に入った里穂は、服が吊るされたラックの前で真剣にそれらを吟味している。
 真剣すぎて、まるで私の声が聞こえてないみたいだ。
 ファッションのことがよくわからない私は口出しすることもできず、里穂を眺めるだけ。
 「・・・よし決めた!絢花、これ」
 かれこれ5分が経過したころ、里穂が顔を上げて私に一着の服を手にした。
 それは、白いワンピース。
 オフショルダーで、麦わら帽子とかの(ふち)のある帽子がよく似合いそうなデザイン。
 そのワンピース自体はとても可愛いんだけど・・・。
 「・・・露出、多すぎない?」
 今まで、オフショルダーの服なんて着たことがない私には、そのワンピースは未知の領域すぎた。
 顔がいい子が着たら、きっと違和感なく見えるんだろうけど私が着たら・・・。
 似合わなさすぎないかな?
 「多すぎないって!絢花は肌綺麗なんだから、むしろプラスポイントだよ」
 「でも・・・」
 「あ、店員さ〜ん。この服、この子に試着お願いします」
 「かしこまりました」
 私に反論の余地も与えず、里穂は店員さんを呼んでしまった。
 「あ、絢花。試着するときは眼鏡外してね」
 「え?」
 「こちらの試着室へどうぞ〜」
 にっこにこの笑顔の店員さんに誘導されて、私は半ば強制的に試着室に入った。
 クリーム色のカーテンをシャッと閉められる。
 ・・・仕方ない。
 もともと相談したのは私の方なんだし、あんまりネガティブなことばっかり言ってたら里穂だっていい気はしないだろうし。
 それに、試着するんだから、きっと服の似合わなさが露見する。
 そしたら、里穂も考え直してくれるだろう。
 他に何室かあるとはいえ、長時間試着室を占領するのも気が引けて私は素早くワンピースに着替えた。
 里穂に言われたとおり、眼鏡も外して試着室内に置かれていた台の上にそっとおいた。
 「絢花?開けるよ?」
 「あっ、うん」
 私の返事を聞いて、里穂は勢いよくカーテンを開けた。
 試着室の前には里穂と、そしてさっきの店員さんも立っている。
 ほら、今にもきっと二人は微妙そうな反応をして・・・。