その笑顔に、ゾゾゾと鳥肌が立った。
 もっと、もっともっと綺麗な笑顔はできなかったの!?
 ここにいる椿ちゃんみたいな!
 椿ちゃんを見習いなよ!
 そうだ、あなた達はそこの神社よりも椿ちゃんに向かって手を合わせ、敬い、見習うべきなんだ!
 ・・・流石に、神様に怒られちゃうかな?
 なんて、そんな変なことを考えてしまうくらいには、私は真意の掴めない声をかけてきた気味の悪い男たちに怯えパニックになっていた。
 「な、なんの用ですか」
 「おねーちゃんたちさ、高校生?何、修学旅行かなんかで来たの?」
 「自由時間?ねー、今暇?」
 「は・・・?なんでそんなこと教えないといけないんですか?」
 なおもニマニマ、ヘラヘラ笑い続ける男たちに、警戒心剥き(むき)出しの顔で睨む。
 常識のある人なら、ここで引き下がるんだろうけど。
 「そんなつれないこと言わずにさぁ。俺らと遊ばない?」
 今、なんと・・・!?
 ナンパ?
 もしかして今私たち、ナンパされてます?
 は?
 椿ちゃんのことを誘ってるのならまだわかるよ?
 こんなに癒やされる笑顔の子いないよ、その笑顔見て近づいて来たのなら納得できる。
 いや、しちゃいけないんだけど。
 でも、私?
 地味子の私?
 この人達の目は、節穴なのかしら?
 「すみません、私たち急いでおりますので」
 「ちょっとだけだからさー、ねぇ」
 ガッ。
 椿ちゃんがそう言ったのに、全然聞いてくれない。
 それどころか、しつこく迫ったかと思うと私の腕を掴んできだ。
 ギリギリと、すごい力。
 「痛っ・・・」
 「絢花ちゃん!」
 「君、アヤカちゃんって言うの?ねぇアヤカちゃん、大人しく一緒に遊んでくれたら、痛いことはしないんだけどなー」
 やばい、本気で話の通じない人だ。
 馴れ馴れしく名前を呼ばれて、それがすごく気持ち悪くて、吐きそうになる。
 気を抜いたら、足が震えてしまいそう。
 腕を振りほどこうにも、大人の男の力で掴まれたそれはびくともしない。
 「離してください!」
 「チッ、うっせーな」
 「俺らが声かけてやってんだから感謝しろよ」
 「チョロそうだったから話しかけたのに、こんな女だったとかマジでハズレだわー」
 「JKじゃなかったら、お前らみたいな前髪女と地味子に価値なんてねえから」
 全然靡かない(なびかない)私たちに苛ついたのか、男たちはつらつらと身勝手なことを言い出した。