そうこうしているうちに、大きな宮に到着する。
 「おみくじ、引きませんか?」という、椿ちゃんの提案に賛成して、私たちは財布から百円玉を取り出す。
 それを備え付けの木箱に入れると、チャリンチャリンと音がなった。
 ごそごそとおみくじのいっぱい入った箱の中を探り、一枚のおみくじを取り出した。
 「私、大吉でした!絢花ちゃんはどうでしたか?」
 私よりも一足先におみくじを引いて、内容を確認した椿ちゃんが嬉しそうに報告してくる。
 そんな椿ちゃんにほんわかしながらも、私もおみくじを開いた。
 「・・・凶だ」
 椿ちゃんの大吉とは違い、あまり良くない結果。
 せめてもの救いは、学問のところが比較的いいことだろうか。
 一つ一つ、書かれていることを読んでいく。
 ・・・恋愛・・・。
 何故か、その文字に目がいった。
 (いばら)の道です、か。
 まあ、こんな地味子に恋愛は難しいだろうしね。
 恋愛の運勢は悪くても、特段自分には関係のないことのように思えた。
 「凶ですか・・・。なら、そこに結んでしまいましょう!」
 「そうだね」
 椿ちゃんに促されて、たくさんおみくじが吊るされてる場所の端っこのほうに凶のおみくじをくくりつけた。
 「椿ちゃん、おまたせ」
 「全然大丈夫ですよ」
 「これから、どうしよっか」
 もう、大体の有名なところは見てしまった。
 「そろそろ良い時間ですし、お昼にしませんか?」
 「あっ、じゃあ椿ちゃんのしおりに書いてたお店に行ってみない?」
 「本当ですか!?調べてるときから、あの店行ってみたくて仕方なかったんです・・・!」
 「決まりだね」
 喜んでる椿ちゃん、可愛いなぁ。
 おみくじの悪い結果も、この笑顔の癒やし効果で完全に中和されている気がする。
 これから毎日、椿ちゃんのこと拝もっかな・・・。
 他愛もない話をしていると、いつの間にか私たちは目的の飲食店の近くまで来ていた。
 割と穴場スポットなのか、あんまり人通りは多くない。
 これくらい落ち着いている雰囲気のほうが私も好きだし、ちょうどよかった。
 「きっと、もうすぐです」
 「楽しみだね」
 「はい!」
 「ねーねー」
 椿ちゃんの声に、聞き覚えのない男性の声が重なる。
 それと同時に肩にポン、と手が置かれた。
 「だ、誰ですか!?」
 置かれた手を振り落とすように勢いよく振り向くと、数人の派手な髪の男の人が立っていた。
 なんだか、ニマニマとした気持ちの悪い笑みを浮かべている。