でも、あんなにつきまとわれて迷惑だしうんざりするっていう黒江さんの気持ちも理解できる。
 こんな地味子が、モテ男様の気持ちを理解するなんておこがましいけれど。
 「チッ、晶一人で相手してろよ。俺を巻き込むんじゃねぇ」
 黒江さんの「巻き込むな」という発言を聞いて、晶くんは私のほうを一瞬申し訳なさそうな目で見た。
 クラス委員のこと、それで私が暴力を受けたことを気にしているのかな。
 私としては、晶くんのそのあとの対応も迅速だったし当面はもういじめられなさそうだったし大満足なんだけどな。
 それに、いじめられたのは私の地味な見た目のせいでもあるし。
 だから、私はもうあんまり気にしてなかったんだけど心優しい晶くんはまだ負い目を感じているみたい。
 核心を突かれたという晶くんの表情に気がついているのかいないのか、そんな晶くんに対して尚も黒江さんは言葉を重ねる。
 「校外学習の時も、お前が絡んでくる女共全員相手しろよ」
 「女の子の相手はするなって言ったり、しろって言ったり。数秒のうちで矛盾しちゃってる・・・」
 「あぁ?」
 あ、やべ。
 つい、口が滑ってしまった。
 ただでさえ凄かった黒江さんの眉間のしわが、さらに深くなった。
 ・・・やっぱり、私が黒江さんの笑顔を見る日は永遠にやってこないな。
 今この瞬間、その機会がますます遠いものになっちゃった気がする。
 晶くんも、予想だにしていなかった私の突然のツッコミに、キツネにつままれたような顔をしている。
 ちょっと面白い。
 「おい地味子、今なんて言った」
 「ごめんなさいごめんなさい。何でもないです。今のは私が悪かったです」
 「なんでもないならなんで謝ってんだよお前は」
 これ以上黒江さんを怒らせてしまう前に、さっさと退散しよう。
 軽く謝りながら、私は共有スペースをあとにした。