嬉しそうに語る里穂はとても可愛くて、女の私でも惚れそうになってしまいくらい。
 すごいなぁ。
 この数分で、里穂がなんだか遠くに行ってしまった気がする。
 誰かと交際するなんて、私には縁のない話だからなあ。
 まあ、私は彼氏が欲しいとか思うタイプではないから別にいいんだけど。
 「だから、絢花も頑張ってよね」
 「え?」
 頑張るって、なんのことだろう。
 まさか、私も誰かと付き合えって言ってるのかな?
 そんなこと、到底無理だし夢のまた夢だって里穂も知っているはずなのに。
 里穂の言葉の真意がいまいち掴めずにいる私に、里穂は説明を重ねる。
 「私、これからお昼は先輩と食べることになると思うから。きっと今までみたいに頻繁にこのクラスに来れないんだよね」
 「え・・・!?」
 「だから、いい加減私以外の友達を見つけなさい!絢花も、孤独なまま一年間過ごすのは嫌でしょ?」
 「うぐ・・・。それはそうだけど・・・」
 里穂は、一気に私を絶望の谷に突き落とす。
 それもそうだよね。
 里穂だって、当然できたばっかりの愛しい彼氏と一緒にいたいだろうし。
 私も、ずっと里穂に頼って里穂の影に隠れているわけにもいかない。
 もはや、依存に近くなってたよね。
 「そんな顔しないでよ。いつでも相談に乗るし、たまに様子も見に来てあげるから。頑張って」
 「本当・・・?」
 「本当だって。そんないきなり親友を見捨てるほど、私だって薄情な人間じゃないわよ」
 さらっと里穂の口から出てきた『親友』という単語になんだかこそばゆい気持ちになる。
 そんな余裕なんてないのに。
 「じゃあ、そろそろ時間だし私帰るね」
 「あ・・・うん。じゃあね」
 いつのまにかお弁当を食べ終えた里穂は、自分の教室に帰っていった。
 ・・・里穂はああ言ってくれたけど、やっぱり不安だな・・・。
 だって私、新学期そうそういじめられそうになったし。
 というかいじめられたし。
 それに、私は里穂と違って社交的な性格じゃない。
 陰キャで、地味子なんだ。
 こんな私と、誰が好き好んで仲良くするんだろう。
 ああ、ダメだ。
 里穂がいなくなってすぐに、ネガティブなことしか思い浮かばなくなってしまった。
 頑張らなくちゃ。
 里穂だって応援してくれたんだし。
 「・・・大丈夫、頑張ろう」
 私は一人でそう意気込んだ。
 そのまま、お弁当箱に残っていたおかずを口に詰め込む。