・・・なんだか、とても珍しくて貴重なものを見たような気がする。
 自分に関係のないことで、あんなにイラつくこともそうだし。
 同時に、あそこまでの余裕のなさそうな魁吏の顔もなかなか見る機会がない。
 いつも無愛想なあいつが、あんな風になるなんてな。
 もしかしたら、さっきの舌打ちも心を乱されている自分に対してのものだったのかもしれない。
 「・・・やっぱり、絢ちゃんはすごいな」
 一人の人間として、本当に尊敬できる。
 不謹慎ながらも、どこか笑いの念をこめた僕のつぶやきは誰の耳に届くこともなく静かな空間に溶け込んでいった。