ちなみに、里穂が入っているのは美術部。
 1年生のときの文化祭で展示していた里穂の絵を見たことがあるんだけど、本当に上手でびっくりした。
 とまあ、反抗もできずにこの人たちに連行されてきたわけだけど。
 さっきの言葉を聞いても分かる通り、穏便(おんびん)なお話ではなさそうだ。
 周りに誰もいないことを確認したら急に口調も変わったし。
 「真白くんと同じクラス委員になれたのは、真白くんがアンタみたいな地味子に対しても優しく接することのできる広い心を持っているだけだから。勘違いしないでよね?」
 あの、私がいつ勘違いなんてしたんでしょうか。
 「聞こえてんの?何か言ってみたらどう?」
 「泣くんじゃなぁい?」
 「高校生にもなって泣くとか超ウケるんですけど」
 勝手な妄想で女の子たちは下品に笑う。
 これは、もしかして私が晶くんのことが好きだって勘違いされているのかな?
 というか、こんな地味子とあなた達みたいなオシャレな人たちじゃ勝負にすらならないと思うんだけど。
 「シカト?アンタ口ついてないの?」
 「えっと・・・つまりあなた達は私に嫉妬してるんですか?」
 「はぁ?」
 私に嫉妬なんてお門違いもいいところだけど。
 嫉妬してるからこんな風に呼び出したりするんだよね?
 「なら、あなた達がクラス委員になれば良かったんじゃ?」
 そうすれば、一緒の委員会になれたかもしれないのに。
 自らチャンスを逃してるじゃん。
 図星だったのか、それともいつまで経っても泣かない私にイラついたのか女の子たちの顔は赤くなっていく。
 「このっ・・・!」
 バチィィン―――!
 「痛っ」
 カシャン。
 頬をビンタされた拍子にメガネが地面に落ちる。
 「うわ痛そ〜」
 「美香やるじゃ〜ん」
 「いい加減にしなさいよ!」
 美香と呼ばれたリーダー格の女の子が声を荒げる。
 「ほら、泣きなさいよ」
 「・・・・・・」
 痛い。
 叩かれたところがヒリヒリして、熱くて痛い。
 何も言わずに、右手で頬を覆いながらうつむく。
 「ハァ、アンタ本当にうざいんだけど。アレ持ってきて」
 「りょうか〜い」
 美香さんが、女の子の一人に指示を出す。
 アレ・・・?
 「美香、はいこれ」
 「洗ってあげる、桃瀬さん」
 まさか・・・!?
 気づいたときにはもう遅く。
 バシャァァァ。
 私の頭の上で、水のたっぷり入ったバケツがひっくり返された。