「郁弥(いくや)くんったら心配し過ぎなんだから。仲良く・・・」
 ・・・ん?
 今、郁弥くんなんて言った?
 『女の子にイジワルなこと』?
 女の子?
 ・・・もしかして、郁弥くんシェアハウスの相手が女の子だって思ってるの!?
 いや、それが普通なんだけど。
 どっちかといえば、今の状況のほうが異常なんだけど。
 危ない危ない、一回脳がスルーしかけた。
 『絢花?急に黙ってどうかしたの?』
 「いや、全然!?全然私は大丈夫だよ、うん大丈夫!」
 『・・・絢花、なんだかちょっと焦ってない?』
 「ううん、全然!焦ってない焦ってない」
 嘘、本当は物凄く焦ってる。
 冷や汗がダラダラ、スマホを握る手にも力がこもる。
 もし、同居相手が女の子じゃないなんて郁弥くんにバレたらめちゃくちゃ怒られる・・・!
 私も怒られるし、絶対伯父さんと伯母さんも怒られる。
 怒った郁弥くんは普段の優しさが嘘みたいに怖くなるんだよね・・・。
 それに、きっとここにまで乗り込んでくるだろうし。
 「アー、ワタシチョットネムタクナッテキタナー!」
 『絢花?』
 「おやすみ、郁弥くん!」
 『ちょっと!?』
 プツッ。
 無理矢理会話を終了させた。
 ・・・なんとか誤魔化せた(ごまかせた)、よね?
 ちょっとわざとらしすぎたような気もするけど、ここは上手く誤魔化せたとしておこう。
 ごめんね、郁弥くん。
 本当のことを言えないことに、少しだけ申し訳なさを感じてしまった。
 郁弥くんはこんなにも私のことを心配してくれてるのに。
 ・・・身内にも本当のことを言えないなんて、シェアハウスって大変だなぁ。
 大丈夫とは言ったけど、それは嘘じゃないんだけど。
 明日から色々と疲れそうだ。
 短くため息をついて、私は部屋の電気を消した。