「ううん、大丈夫」
 寝ようとしてたけど、里穂と話をするほうが楽しいもん!
 幸い、里穂は夜遅くにダラダラと長電話をしてくるタイプじゃないし。
 私もちょっとくらいなら、寝落ちはしない。
 『あ、そう。なら良かった』
 「里穂こそどうしたの?」
 『特に用はないんだけどね。新生活は大丈夫かなって気になったから電話しただけ』
 ジ〜ン・・・。
 里穂のあまりの優しさに、感動してしまう。
 私のことを心配してくれるだなんて。
 私はなんて良い親友を持ったのだろう。
 「新生活はなんともないよ!・・・ただ」
 『ただ?』
 どうしよう。
 晶くんと黒江さんとシェアハウスすることになったことは言ったほうが良いのかな?
 隠し通すことは多分難しいし。
 この家にも里穂を招いて遊んだり一緒にテスト勉強したりしたいもんね。
 それに、いざ何かあったときは相談できる人が身近に欲しい。
 『絢花?』
 「・・・里穂、これから何を言っても驚かないって約束する?」
 『え?』
 「信じるって約束してくれる?」
 『なに、もったいつけるじゃん。良いよ、驚かないし信じるって約束してあげる』
 「実は・・・晶くんと黒江さんとシェアハウスすることになって」
 『・・・・・・』
 あれ、無反応?
 スマホの向こうから、里穂の声が聞こえてこない。
 気まずい沈黙。
 ちょっと経って、やっと里穂が喋った。
 『・・・絢花、もしかして晶くんと黒江さんって』
 「多分里穂が今思い浮かべてる人のことで間違いないと思う」
 『嘘でしょ・・・何があってそんなことに』
 まだよく状況が理解できてない、いや理解するのを拒んでいる里穂に何があってこうなったのか一から説明する。
 「・・・ってことなの」
 『いや、まあシェアハウスすることは信じるけど・・・。絢花はそれでいいの?』
 「へっ!?私?」
 『絢花の気持ちはどうなのって聞いてるの』
 私の気持ち・・・。
 確かに最初は「シェアハウスなんてできるか!」って思ってたけど。
 「私は大丈夫だよ」
 黒江さんと完全に理解し合うのはきっとまだまだ時間がかかるし、難しいけど。
 悪い人じゃなさそうだし。
 口は悪いけどね。
 晶くんは最初から歓迎してくれたし。
 きっと、なんとかやっていけると思う。
 『・・・そっか。絢花が納得してるなら、私からは言うことは何もないわ』