「え、本当に作ってくれるの?」
 「もちろん」
 こう見えて私、結構料理得意なんだよね。
 よく伯母さんと一緒に試行錯誤しながらお菓子作ったりしてたし。
 「やった」
 「そんなに喜ぶことなの?」
 「だって、久しぶりの手料理だし。実を言うと、最近カップラーメンにも飽き飽きしてたんだよね」
 まあ、そりゃ毎日食べてたら飽きるよね。
 ああいうのはたまに食べるから美味しいんだよ。
 「・・・何喋ってんだよ」
 「魁吏、いつの間に」
 「うげ」
 いつの間にか二階から降りてきた黒江さんと鉢合わせ。
 あ、ヤバ。
 思ったことが思いっきり口に出ちゃった。
 案の定、私はまた黒江さんに睨まれる。
 チッと舌打ちしながら黒江さんは「で?何してんの」と晶くんにもう一度質問し直した。
 「絢ちゃんがこれから僕たちの御飯作ってくれるんだって」
 「絢ちゃんって何だよ」
 「この子のことだよ。桃瀬絢花ちゃん、だから絢ちゃん」
 チラッと、黒江さんが私のことを見た。
 黒江さんは私よりも身長が高いから見下される形になる。
 「ハッ」
 「・・・なんで鼻で笑うんですか」
 「晶は物好きだからな。今まで身の回りにいなかったタイプの地味ないこいつのことが気になるんだな」
 「はっ!?」
 「ま、どーせすぐ飽きられるだろうから期待はするなよ。お前が傷つくだけだから(笑)」
 「ちょっと魁吏」
 むっか〜!
 完全にムカついた。
 「なんでそこまで言われなきゃいけないんですか」
 「忠告してやってるだけだけど」
 「は?人のことをそうやって貶す(けなす)ことを忠告って言うんですか?だとしたら失礼極まりない“忠告”ですけど」
 「あ?」
 「顔が良ければ何をしてもいいんですか?地味だったら存在しているだけで文句を言われなきゃいけないんですか?」
 ずっと我慢していたことをぶつける。
 地味、地味、地味、地味って。
 地味なことの何が悪いの。
 別に誰にも迷惑かけないじゃん。
 顔がいいだけの黒江さんみたいな人より、よっぽどマシだと思うけど。
 「2人ともそこまで。一旦落ち着いて」
 「晶はこいつに甘すぎるんだよ」
 「魁吏、今のはお前が悪い」
 ヒートアップしてきたところに、晶くんの仲裁(ちゅうさい)が入る。
 晶くんにたしなめられて、黒江さんは少しだけ不服そうだ。
 「絢ちゃんに謝れ」
 「ふざけ・・・」
 「謝れ」