シャアアァァァ―――ッ、とシャワーから出た水の粒が、浴室の床のタイルにあたって砕ける。
 冷たい水を浴びて、目もだいぶ冴えてきた。
 ・・・よくよく考えてみれば、さっきの、すごい事故なんじゃ。
 いや、よくよく考えなくても事故は事故なんだけど。
 そんな、少女漫画みたいなことある?
 これが少女漫画ならまだ救いようはあるかもしれないけど。
 だって、少女漫画ならニアミスしちゃうのは決まって可愛い女の子なわけでしょ?
 少なくとも、私みたいなお目汚しではないはず。
 さすがに、そこまで言ったら私があまりにも可哀想すぎるかな?
 腐っても魁吏くんの彼女なわけだから、お目汚しとは思われてないと思いたい。
 ・・・冷静になったと自分では思ってても、まだ完全に冷静になったわけではないみたいだ。
 思考が、一周回ってぐるぐるし始めた。
 シャワーの温度は、最低温度。
 頭を冷やすために水をかぶっていたけれど、これ以上は風邪をひいちゃう。
 そしたら、また二人に迷惑かけちゃう。
 授業も休む羽目になっちゃうし。
 仕方なく、シャワーの水をお湯に変えてパパっと髪も体も洗ってお風呂から上がった。


 お風呂を上がって、用意していた服に身を包んで、脱衣所を出る。
 何故だかわからないけど、なんとく足音を消して抜き足差し足で共有スペースであるリビングに入った。
 脱衣所のドアを見ると、かかっている札は『未使用』のままだった。
 ・・・申し訳ない。
 魁吏くんはもう自分の部屋に帰ったのかな?
 リビングは電気がついておらず、薄暗い。
 その暗さとも相まって、なんだか自分が泥棒か何か悪いことでもしてる気分だ。
 魁吏くん、脱衣所に来たってことは何か脱衣所かお風呂に用事があったってことだよね?
 一応、使い終わったって声をかけよう。
 とんでもなく、気まずいけど。
 覚悟を決めて、一歩を踏み出したときリビングにおいてあるソファに座っている人影に気が付いた。
 「・・・魁吏くん?」
 「・・・・・・・っ!」
 それは、魁吏くんだった。
 何か作業をしているわけでもなし、スマホを見ているわけでもなし、ただただソファに腰かけている。
 ・・・本当に何をしているんだろう。
 いや、そんな様もかっこいいけど、イケメンですけど?
 魁吏くんは何か考え事をしていて私に気づいてなかったのか、声をかけると肩を跳ねさせてびっくりしていた。