気づいた時には、もう全てが手遅れだった。
 頭ではよくないことだとわかっていながらも、心が言うことを聞いてくれない。
 二人に恋愛的な感情を抱いているわけじゃないの。
 もしこの感情が『恋愛』なんて二文字で片付けられてしまうものなら、私たちの歯車はこんなに狂っていなかったはずだ。
 ・・・そう、これはもっとドロドロしたもの。
 無理矢理言語化しようとするなら、依存心。
 「・・・ねえ、魁吏、晶。私たち、いつから間違えちゃったんだろうね・・・」
 急に降り出した夕立が、心に大きな大きな染みをつくっていく。
 ほっぺにも雨粒がたくさん当たって、もうどれが私の涙でどれが雨粒かわからないや。
 天気予報のバカ、雨なんて一言も言ってなかったじゃん・・・。
 ああ、私の人生ってなんでこんな風になっちゃったんだろう。
 さすがに、今回のことで私は魁吏と晶に見限られちゃったはずだ。
 今まで二人と付き合ってきた子は何人か見たことがあるけど、そして邪険な対応をしてきたけど、あそこまで大切にされてた女の子は見たことがなかった。
 絢花ちゃん、見るからにいい子だもんね。
 あの魁吏が好きになるのもわかるよ。
 そんないい子を自分勝手に自分のエゴで傷つけちゃって・・・最低最悪だ。
 体を叩く雨は、なんだか生温かい。
 なのに、私の心は冷えていくばかりだった。
 「私のせいで・・・ほんとにほんとにごめんなさい・・・」
 誰に向けた謝罪なのか、私自身にもわかっていない。
 苦し紛れにこぼした『ごめんね』は、誰の耳に届くこともなかった。