『あ、晶・・・、違うの、これは、えっと』
 必死に弁明しようとするも、上手くこの場を切り抜けられるような言い訳は頭には浮かんでこない。
 その場にいた人全員の視線が痛いほどに突き刺さって、私の足も自然と震えた。
 雑貨店に置いてあった鏡に、すうっと青ざめた自分の顔が映って見えた。
 『那々実ちゃん?なんで、ユリちゃんにそんなこと』
 『・・・・・・』
 それ以上その場にいたくなくて、私は二、三歩後ろにさがったあと晶の話も聞かずに店から走り出した。
 そのまま、必死にショッピングモールの入り口まで走って逃げた。
 人が多いところを全速力で走ったから、何人かの他のお客さんにぶつかっちゃったし転びそうにもなったけど、それでも逃げた。
 そこまで行ったところで、体力も限界に近づき一旦足を止める。
 私は一体何から必死に逃げていたのか、後ろには誰もいない。
 そのままとぼとぼと家に帰ると、手も洗わずに自室のベッドに身を投げ出した。
 ぽす、と柔らかいベッドはふらふらな私をいとも簡単に抱きとめた。
 (まぶた)を閉じると、自然とさっきのことが思い出される。
 ・・・・・・どうしよう、私・・・・・・。
 怒りに任せて、とんでもないこと言っちゃった。
 あんなこと、言っちゃダメなのに。
 でも、でも・・・。
 圧倒的にあの状況で悪かったのは私だから、誰を責めることもできない。
 だからこそ、私の行き場を失った感情は胸の内に充満していく。
 私は、どうすればよかったんだろう・・・。
 どうすれば、また昔みたいに三人で笑えるんだろう・・・。
 いくら考えても、その問いに対する最適解は見つからない。
 なんで、こんなことになっちゃったの・・・?


 次に目を開けると、窓の外は橙色(だいだいいろ)に染まっていた。
 夕方の日の光が窓から部屋の中に差し込んできて、部屋の中の小さなホコリが舞っているのが照らし出される。
 涙が、ほっぺでカピカピに乾いていた。
 ボーっと(もや)のかかった頭で、部屋の棚に置いてある箱まで歩く。
 その箱を開けると、中には私が今まで集めたイヤリングやネックレス、ブレスレットが入っていた。
 今ではそれも、全部無駄なゴミにしか感じられない。
 こんなもの、集めても何にもならなかったじゃないか。
 晶の隣は、ユリに奪われてしまったのだから・・・。
 帰ってきてそのままベッドにダイブしたから、はいているスカートはくしゃくしゃでしわがついていた。