一度悪いほうに転がった思考は、なかなかいいほうに戻ることはない。
 何かに依存するように、狂ったようにもとの臆病な私を殺して新しい自分を創りあげていった。
 どこかで聞こえる誰かの悲鳴や泣き声は無視した。
 それに比例するように、私の二人に対する執着心もどんどん抑えきれないようになっていく。
 自分でも、私自身がどう変化していくのかわからなかった。
 未知なるマガイモノの私への恐怖とストレスが爆発したのは、休日に可愛い女の子といる晶を見つけたときだった。
 『誰・・・あれ・・・』
 人がガヤガヤとしているショッピングモールに私が行ったのは、新しいアクセサリーを買うため。
 頑張ってお母さんのお手伝いをしてもらったお小遣いを握りしめて、一人で雑貨屋に入った。
 どんなアクセサリーを買おうかな、髪飾りとかもいいな。
 どのアクセサリーを買えば、中学生の晶と魁吏に近づけるかな。
 首にはこの間買ったばかりのお花のネックレスがかかっていた。
 アクセサリーコーナーに向かった先で、私はそれを見た。
 『ねえ、晶くん。どれが良いと思う?』
 『う~ん、ユリちゃんにはこのハートのイヤリングとか似合うんじゃないかな』
 『そうかな?』
 『うん、ほら、可愛い』
 『ふふ、ありがとう!』
 隣に立ったユリという女の子の耳に、可愛らしいイヤリングを近づけて晶はにこりと微笑んだ。
 ユリも同じように、幸せそうに笑った。
 誰かが何かを言わなくても、小学生の私にも晶とユリがどういう関係性なのかはわかった。
 ・・・彼氏と、彼女。
 晶は、あの女のモノ・・・?
 あの女と恋人になっちゃったから、私と最近いられなくなったの・・・?
 じゃあ、魁吏も?
 私には教えてくれなかっただけで、魁吏にも可愛い彼女がいるの・・・?
 絶対に、あの女よりも私のほうが二人と一緒にいるために努力してるのに。
 それなのに、なんで二人の隣で笑ってるのは私じゃないの。
 なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで・・・・・・!
 私、おしゃれも頑張ったんだよ?
 二人にふさわしくなるために、お友達も増やしたんだよ?
 『・・・私を、見てよ』
 ぽつりと口からあふれ出た言葉は、思っているよりも大きかった。
 その声で、晶は私に気がいたみたいで振り返る。
 そして、あのにこやかな顔で私に話しかけた。
 『あれ、那々実ちゃんだ。久しぶり!』
 『晶くん、知り合い?』