【那々実side】
 シェアハウスを飛び出した私は、さっきまでの勢いはどこへやらとぼとぼと肩を落として歩いていた。
 紅潮した頬は、向かいから吹いてくる風ですでに冷め切っていて。
 汗ばんだ額に頑張って整えた前髪が張り付いている。
 ・・・どうしよう、絶対に私言い過ぎたよね・・・。
 絢花ちゃん、悲しそうな苦しそうな顔してた。
 それなのに私、酷いことばっかり言っちゃった。
 今になってようやく、自分の言ったことのひどさがありありとわかってきて自業自得だけどどうしようもなくしんどくなってくる。
 昔からの私の悪い癖だ。
 魁吏と晶に、執着しちゃうの。
 二人は私の物でもなんでもなにのに。
 別に、絢花ちゃんは何か悪いことをしたわけじゃない。
 魁吏の彼女になっただけ。
 いやそりゃ、魁吏と晶とシェアハウスしてたことにはちょっと、・・・かなり驚いたし困惑したけど。
 どうなんだとも思ったけど。
 それでも、私自身気づかないうちにパニックになってそれに頭に血も昇って絢花ちゃんにものすごく悪いことばっかり言ってしまった。
 こんな女、とか許さない、とか。
 一体何様なんだ、って感じだよね。
 魁吏、怒ってたなあ・・・。
 晶も、今までに見たことがないくらいに怖い顔してた。
 許されないのは、私だ・・・。
 馬鹿だなあ、私。
 彼女ができたからって、私と二人が幼馴染じゃなくなるわけじゃないのに。
 それなのに、変に幼馴染マウントとかとったり傷つけたりして、これじゃあ私から嫌われにいったみたい。
 自分自身で、大切なものをなくしてしまった。
 自嘲的な笑い声しか出てこない。
 誰にもその笑い声が届くことはなく、重たい空気に溶け込んでいった。


 私と、魁吏と晶が最初に会ったのがいつなのかなんて、もう覚えていない。
 近所に住んでいて、それに親同士が仲良しだということもあって私たちはよく一緒に遊んでいた。
 常に三人で過ごしていた。
 お母さんとお父さんが作っていた私のアルバムには二人の写真も山ほど載っている。
 それくらい、私たちはずっと一緒にいた。
 あの約束を、二人が交わしてくれたのは私が小学生になったとき。
 昔の私は引っ込み思案で、大人しくて、部屋の隅っこでずっと本を読んでるような暗い少女だった。
 自分から話しかけに行くのも苦手、誰かが話しかけてくれてもドギマギしてそっけない返事しかできない私は小学校というコミュニティにうまく馴染めず孤立していった。