もう自分が何が原因で泣きたくなっているのかわからない。
 でも、泣いちゃダメだ。
 めんどくさいって、思われちゃう。
 ただでさえ、多大なる迷惑をかけているのに、これ以上面倒なことは起こしたくない。
 そんなの、彼女として失格だ。
 下唇をかみしめて、今にも出てきそうな涙を無理矢理引っ込める。
 息はまだ完全に戻ってきてはいないけど、さっきよりかはだいぶマシになってきた。
 そのタイミングを見計らって、よろよろと立ち上がる。
 「・・・ごめん、私、部屋に戻るね」
 「・・・わかった」
 二人の視線から逃れるように、共有スペースを出て自室まで足早に戻る。
 バタン、とドアを強めに閉めてそのまま、ドアにもたれかかったままズルズルとしゃがみ込む。
 自分が、ものすごく惨めに思えた。
 魁吏くんの恋人に慣れて、浮かれていた。
 魁吏くんには、私以上に近い人がいるのに。
 私と那々実ちゃんの間には、縮めることのできないくらいの差がある。
 私が知らない魁吏くんを、那々実ちゃんはたくさん知っている。
 当たり前のそのことが、どうしようもなく痛いくらいに私の胸を締め付ける。
 醜い私も、いっぱい見つかっちゃった。
 私、自覚してなかっただけでこんなにダメ人間だったんだ・・・。
 こんなに心の狭くて、周りに迷惑ばっかりかける人間だったんだ・・・。
 ついに、目からとめどなく涙があふれてきた。
 ・・・那々実ちゃんが恋のライバルだなんて、私勝てないよ・・・。
 それからしばらく、私は声を押し殺しながら動くこともせず、ただただ泣いていた。
 世界から、消えてしまいたかった。