魁吏くんと晶くんが幼馴染で、魁吏くんと那々実ちゃんが幼馴染なら、晶くんと那々実ちゃんも幼馴染になるのか。
 「う~ん、絢ちゃんがこんなに悩んでるってことは、また那々実ちゃんの悪い癖が出たのかな・・・」
 「那々実ちゃんの悪い癖?」
 「あんまり人に言うようなことでもないんだけど、那々実ちゃんは・・・」
 ピンポーン―――。
 何か大切なことを言おうと晶くんが口を開いたタイミングで、シェアハウスのインターホンが鳴った。
 晶くんが立ち上がる。
 「僕が出るから、絢ちゃんは座って休んでて」
 「ありがとう」
 「一昨日ネットで買ったのが届いたのかな?」
 晶くんは独り言を言いながら、部屋から出て行った。
 ・・・晶くん、さっきなんて言おうとしていたんだろう・・・。
 那々実ちゃんは・・・何?
 聞きたいような、聞かなくて逆にほっとしているような。
 色んな感情が、複雑に入り混じる。
 晶くんは休んでて、って言ってくれたけどこれじゃまるで休まらないよ・・・。
 もう一度、ため息をついたとき。
 「・・・・・・!」
 「・・・・・・、・・・・・・・」
 「・・・・・・!?」
 玄関のほうから、何か口論でもしているような声が聞こえてきた。
 何て言ってるのかは、よく聞こえないんだけど・・・。
 荷物が届いたんじゃないのかな?
 あ、もしかして不審者が家の中に入ろうとしてるとか!?
 それか、怪しい宗教勧誘とか・・・!?
 玄関のほうが気になって休むどころではなくなった私は、共有スペースのドアを恐る恐る開いて顔をのぞかせた。
 なんと、そこにいたのは不審者でも宗教勧誘でもなくて・・・。
 「絢花!」
 「え、郁弥くん・・・!?」
 私の従兄弟の、郁弥くんだった。
 私の顔を確認した郁弥くんは薄っすら青ざめて、唇もこころなしかわなわなと震えている。
 「絢花、一体これはどういうことなんだ・・・?」


 現在、共有スペースには私、魁吏くん、晶くん、そして郁弥くんの四人が集合している。
 郁弥くんは仁王立ちしていて、私はその郁弥くんの真ん前で縮こまりながら正座。
 魁吏くんと晶くんの二人は、そんな私と郁弥くんを見比べながら床に座っている。
 「絢花」
 「・・・・・・ごめんなさい、郁弥くん」
 いつもより数段低い声で名前を呼ばれて、私はただただ謝ることしかできない。
 郁弥くん、本気で怒っているときの声だ。