「ただいま~・・・」
 「あ、おかえり。二人とも、デートどうだった?」
 二人で中に入ると、ひょこっと晶くんが出迎えてくれた。
 映画を見たりしたのはすごく楽しかったし、魁吏くんがちゃんと私のことを彼女って思ってくれてるのもわかったんだけど・・・。
 でも、私の頭の中は那々実ちゃんのことで占められている。
 「あ、あはは・・・」
 「・・・・・・?」
 そんな私は、晶くんに乾いたような曖昧な笑いを返すしかない。
 魁吏くんは、手を洗った後自室に戻ってしまった。
 共有スペースには、私と晶くんだけが取り残される。
 魁吏くんが部屋のドアを閉める音が聞こえて、私はソファに腰かけた後ようやく小さなため息を吐いた。
 運悪く、その音を隣に座った晶くんに拾われてしまう。
 「絢ちゃん、何かあった?」
 「え?」
 「いつもより顔が暗いから。悩み事があったら、相談してほしいな」
 「晶くん・・・」
 嘘、私そんなに顔に出ちゃってたかな・・・?
 魁吏くんに変に思われちゃったらどうしよう・・・。
 「何か魁吏に酷いこと言われた?それだったら僕から魁吏に注意するよ?」
 「魁吏くんは何も悪くないの。むしろ、おかしいのは私のほうで・・・」
 「絢ちゃんが、おかしい?」
 「うん・・・」
 自分でも原因を突き止めることはできていないけど。
 いや、むしろモヤモヤの原因がわからないことが私のおかしさを裏付けているはず。
 「なんでも、僕に吐き出してみて」
 真剣なまなざしで晶くんは私を見る。
 やっぱり、晶くんは優しいなぁ。
 ・・・ここまで言ってくれているんだから、無下にするのもアレだよね。
 それに、晶くんは優しいし頭もいいし、何より魁吏くんのことも一番知ってるから、相談相手にはこれ以上なくうってつけだろうし。
 「今日、映画見た後、書店によったんだけど」
 「うん」
 「そこで、魁吏くんの幼馴染っていう女の子が魁吏くんに抱きついたり、何でも知ってる風に話したりして」
 「ちょっと待って」
 私がそこまで言うと、晶くんは私の次の言葉を止めた。
 どうしたんだろう。
 ここまでの話の中で、何か引っかかる要素ってあったかな?
 「その『魁吏の幼馴染の女の子』って、もしかして那々実ちゃんのこと?」
 「え、うん。晶くん、那々実ちゃんのこと知ってるの?」
 「知ってるも何も、那々実ちゃんは僕の幼馴染でもあるんだよ」
 あ、そっか。