幼馴染なんだから、当たり前、だよね。
 そんなことわかってるのに、どうして胸の痛みはおさまらないんだろう・・・。
 「・・・・・・、・・・せ、桃瀬!」
 「!!!」
 魁吏くんの私を呼ぶ声で、私は現実に強制的に引き戻された。
 いけない、ずっと上の空だったんだ。
 「・・・おい、大丈夫か?」
 心配そうだけど、でもやっぱりいつものぶっきらぼうな顔をして魁吏くんは私の顔を覗き込む。
 大丈夫、っていうのは何に対して?
 ずっとボーっとしてたから、体調不良を疑われたとか?
 「うん、大丈夫!ごめんね、心配させちゃって」
 とりあえず、いつもより明るい声で心配させないように魁吏くんに謝罪した。
 だけどそのあとも、魁吏くんは疑うように私のことを見てくる。
 「ほら、早くレジ行こう!」
 私はその視線を避けながら、魁吏くんの手を引いて半ば強引にレジまで誘導する。
 レジに並びながらも、私は一人で悶々としていた。
 なんで、私はこんなにモヤモヤしてるんだろう?
 那々実ちゃんが魁吏くんのことを好きかもしれないから?
 それとも何か、もっと単純な理由・・・?
 今までに感じたことのないモヤモヤの正体に、私は首をひねるしかない。
 でも、とにかく初対面の子相手にこんな暗い感情を抱くなんて、どう考えても私がおかしいよね。
 きっと、私が何か間違ってるのか、もしくは性格が極限まで悪くなっているかのどっちかなんだ。
 だったら、私のこんなモヤモヤを魁吏くんに見せたり感じ取られたりしちゃ絶対にいけない。
 こんなんじゃ、魁吏くんに幻滅されちゃうよ・・・。
 よし、なるべく平静を装わなきゃ。
 静かにそう決意して、私はお会計を済ませた。
 魁吏くんも、一足先にお会計を終わらせてたみたいだ。
 「じゃあ、帰ろっか」
 モヤモヤを抱えたまま、私と魁吏くんの初デートは終了した。


 ショッピングモールからの帰り道、私はバカみたいによく喋った。
 会話が途切れちゃうと、また私の暗い感情が顔を出してきちゃうと思ったから。
 何を話したか、頭が半分真っ白で何にも覚えてないけど、気が付いたらシェアハウスに到着していた。
 魁吏くんの反応が良いものだったのか、それともつまらなさそうだったのかすら思い出せない。
 それくらい私は、周りのことが見えてなかった。
 魁吏くんが鍵を取り出して、シェアハウスの扉を開ける。