私が答えるよりも早く、那々実ちゃんは自ら名乗った。
 年齢は、高校一年生だから私と魁吏くんの一つ下みたいだ。
 幼馴染・・・なんだ。
 ・・・本当にそうなのかな?
 ただの幼馴染って、こんなに距離が近いもの・・・?
 「わ、私は桃瀬絢花と申します」
 「ねえ、絢花ちゃんって・・・魁吏の彼女?」
 「え、え~っと・・・」
 そんなこと訊くって、やっぱり・・・?
 少なくとも、那々実ちゃんは魁吏くんに好意を寄せているってこと?
 どうしても、変な勘繰りをしてしまう。
 そ、それより!
 この質問には、どう答えるのが正解なんだろう。
 魁吏くんは、那々実ちゃんに言ってもいいのかな・・・。
 ちらっと魁吏くんのほうを伺う。
 「そうだよ、俺の彼女。だから那々実、桃瀬に余計なちょっかいかけんなよ」
 「・・・・・・!」
 俺の、彼女・・・!
 初めて魁吏くんの口からその言葉を聞いたかもしれない。
 魁吏くん、ちゃんと私のこと彼女だと思ってくれてたんだ・・・。
 その言葉だけで、胸がじんわり甘酸っぱくなっていく。
 「・・・へぇ~。あの魁吏にも、ついに彼女かあ。絢花ちゃん、何かわからないことがあったら聞いてね!私、魁吏のことならな~んでも知ってるから!」
 「あ、うん・・・」
 なんだか、さらっとマウントとられたような・・・?
 魁吏のことなんでも知ってる、って多分アピールだよね?
 私が、考えすぎなだけ・・・?
 さっき無理矢理ふりはらったモヤモヤが、またよみがえってくる。
 「じゃあ、私友達待たせてるしもう行くね!魁吏、絢花ちゃん、待たね~!」
 それだけ言うと、那々実ちゃんは魁吏くんが持ってる小説と同じ小説を左手に持ち、右手で私たちに手を振りながら去っていった。
 魁吏くん、那々実ちゃんとは仲良しじゃないって言ってたけど私にはそうは見えなかった。
 学校の女の子に対してよりも、だいぶ距離近かったし・・・。
 それに、学校の子たちに抱きしめられたら引き剥がすだけじゃ済まないだろうし・・・。
 これも幼馴染なら、普通のこと?
 那々実ちゃん、すごく可愛かったし魁吏くんの隣に立つなら私みたいな地味子よりも那々実ちゃんのほうがずっとふさわしいよね。
 「・・・ったく、那々実のああいうところ、昔から変わんねぇな」
 その魁吏くんの一言で、ずきっとなぜか胸が痛む。
 魁吏くんも那々実ちゃんも、お互いのことよく知ってるんだ・・・。