「見たの。ちょうど、図書室入ったときに、その。唯織と東雲さんが……キス、してるとこ」
唯織は首を横に振った。
「キスなんて、してない。確かにされそうになったけど、俺が拒否っちまったから」
「え」
じゃあ、私が見たのは、キスをする直前だったということなのか。
角度で、しているように見えてしまっただけってこと……?
「……言われたんだよ、蘭さんに。拒むってことは、他にキスしたい大切な人がいるんじゃないの、って」
それは、つまり。
落ち着いてきた心臓の鼓動がまた速まりだす。
「俺にとって大切なのは、蘭さんじゃなくて翼羽だって、気付かされたんだ」