──唇と唇が触れる直前、私の両肩が強く押された。


閉じていた目を開け、いっちゃんの目をじっと見つめる。


「…あ、ごめんなさい!そういうつもりでは……」


明らかに動揺して目が左右にキョロキョロと動いている彼。


ぐ、と目に力を入れる。


「なんで拒否したの?」


きつい口調に、彼が息を呑んだのが分かる。


「……キスしたくないのは、本当にキスしたい大切な人が他にいるからじゃないの?」


諭すように、ゆっくりと告げる。


彼が目を見開いて、首を横に振った。


「いないよ……そんな人」


切なげに目を細める彼は本当に。


どうしようもなく鈍感で。



「いるでしょう。小さい時からずっと一緒で、側にいないと不安になる人が……!」



強い口調で言ってもなお首を傾げる彼の左頬をパシ、と平手で打った。


「……彼女の私に言わせないで、自分の気持ちくらい気付きなさいよ!あなたが好きなのは……っ!」


涙が浮かぶのも構わず叫ぶ。


「───宮川さんでしょう……?」