「学校でもっと、話しかけてきてもいいのに」
唯織の言葉に、出来るわけがないでしょ、と心の中でツッコミをいれた。
ただでさえ女子の事情を男子は知らないけれど、唯織は特にだと思う。
女子にあまり興味がないのと、天然なことも相まって、そういうのにとても疎いのだ。
女子は、高校生だと当然、グループというものが出来る。
それは、一軍・二軍・三軍、といったように分けられ、一軍の中にもボス的人物がいる。
それが唯織の彼女、東雲蘭だ。
圧倒的美貌と気の強い性格で、女子の一軍界に君臨している。
私は一軍にはほど遠く、二軍と三軍の狭間をうろついているレベルだけれど。
そんな私が、女王である東雲さんに何かを言えばどうなるのかは、目に見えている。
東雲さんと恋敵になるのが、どういうことを意味するのかも。
唯織が東雲さんのものになってしまった今、私に出来ることはほぼないに等しかった。