「もしもし、陸?」
「着いたぞ。降りてこい」
「うん、すぐ行くね。ちょっと待ってて」
電話を切った私は、荷物を持って急いで玄関の外まで降りた。
「よっ!おはようさん」
「おはよ、陸。迎えに来てくれてありがとう」
「よし、行くぞ」
私は玄関の鍵を閉めて、陸の車の助手席に乗り込んだ。
「ちゃんとシートベルトしろよ」
「もう、分かってるよ」
「じゃあ出発するぞ」
「お願いします」
車を発進させた陸は、片手でハンドルを持って車を走らせていく。
「そういえば、どこのビュッフェに行くの?」
「ホテル・マリンアイだ」
「えっ!? マリンアイ!?」
あの高級ホテルのマリンアイ!? そんな高級ホテルのビュッフェに連れてってくれるの!?
「あれ、言ってなかったか?」
「言ってなかったよ!」
「そうか。悪かった」
まさかマリンアイに行けるなんて……!
「いや、めっちゃ嬉しいよ! ずっと行ってみたいと思ってたから」
「そうか。なら良かった」
陸の横顔にふと目を向けると、陸はいつもと違うメガネをかけていた。
いつもかけているのは、メタルの青いスクエアフレームなのに、今日は違くてセルの黒い縁のメガネをしていた。