「良かったじゃん、茉由!デートのお誘いだよ?」

「違っ!そんなんじゃないから!……デートじゃないもん、別に」

「またまた〜。強がっちゃって〜」

 そうからかってくるのは、同じく同期の山神汐莉(やまがみしおり)だ。
 汐莉は私が陸のこと好きなのを知っているからこそ、応援してくれている。
 私だって頑張りたいと思ってはいるのだけど……。なかなか前に踏み出せないというのが現実だ。

「楽しんできなよ、デート!」

「だから、デートじゃないってっ……!」

 いや、私からしたら陸と二人でどこかに行くのは、デートの分類に入ってるのだけど……。
 だって大好きな陸と美味しいものを食べにいけるんだよ?……そんなの、嬉しいに決まっているでしょ。
 


 それでも陸の気持ちは分からないから、私の恋心は複雑なのだ。  
 私の気持ちに気付いているのか、気付いていないのか……。陸の気持ちはどうなのだろうか?

「でも本当に楽しんできなよ。貴重なデートなんだから」

「うん、ありがと汐莉」
 
「経過報告、待ってるからね」

「ええっ!?」

 汐莉はすぐ私をからかってくるけど、応援してくれているから許せてしまう。

「んじゃ、先に上がるわ。お疲れ〜」

「お疲れ〜」

 その日少しの残業をして仕事を終えた私は、スーパーに寄って夕飯の材料を買って家に帰った。