私は陸のことが好きで、ずっと片思いしていた。
 だけどまさか、陸と両思いだったなんて……まるで思わなかった。

「茉由……」

 陸に見つめられると、ものすごくドキドキする。
 心臓がバクバクして胸が高鳴って、なんだか照れくさい。

「……陸、好きだよ」  

 そう陸に告げると、陸はゆっくりと顔を近付けてきた。
 
「……茉由、もう黙って」

「え……」 

 そしてそのまま、お互いの唇がゆっくりと重なり合っていた。

「ねぇ今……キス、したの……?」

 と陸に問いかけると、陸はメガネをぐいっと上げて「したけど? なんか茉由がして欲しそうな顔、してたから」とドヤっとした顔で言ってきた。

「えっ!?……してました?」

「してた」

 ……は、恥ずかしい。そんな顔してたつもりなかったのに……! 
 でも……ものすごく嬉しかったのは分かる。

「そうか。茉由と俺は、両片思いだってことか」

「両片思い……?」

 確かに私は、陸に片思いしていた。ずっと好きだった。

「俺もお前のこと、好きだったからずっと」

「……そうなの?」

「ああ。……だから両片思い、ってことだよ」

 私たちはお互いに、ずっと片思いしていたんだ。……だから【両片思い】だったんだ。
 私たちはずっと、お互いの気持ちに気付かずにいたんだ。……こんなにも近くにいたからこそ、その想いに気付くことが出来なかった。