もう一度駆けようとしたとき,今度は礼夢くんに呼び止められた。
振り向こうとするも,止められて。
何だろうと考えた途端,背中に声が届く。
「…また,お寿司食べに行こう」
あ…
「うんっ。うんっ! 約束!」
私も,言われた通り振り向かず,精一杯の気持ちを込めて答えた。
もう,振り向かないよ。
今まで私にやさしかったのは,私を好きな礼夢くんじゃない。
今までも,これからも。
全部無くなっちゃうんじゃないかなんて,惜しむこともない。
顔を合わせるのは,また次の機会。
私はそっと,走り出した。
気持ちはとても,晴れやかだ。
次はきっと,私の番。
『逃げないで』
逃げてばかりじゃいられないから。