「そんなことより、これを見て!」

エイモンがボロボロになった紙を広げる。その傍らには疲弊しきった虎の式神がおり、任務に行っているアレス騎士団の誰かが送ったものだと一目でわかった。

「ケレトに任務で行っていたんだけど、大怪我を負ってこれ以上は戦えないみたい」

チェルシーが言い、イヅナは「ケレト」という国名に目を見開く。そこはイヅナの父の故郷であり、ツヤの出身地だ。

「大怪我ということは、よほど強い妖が相手ということか……」

「どんな妖が出たのかは書かれてないね」

チターゼとアレンが言い、イヅナは紙を覗き込む。字はよほど焦って書いたのか、所々歪んで読めない箇所もいくつかある。そして、怪我を負っている状態で書いたのだろう。紙には血が付着していた。

「この手紙が送られてきたってことは、ケレトにすぐ向かわないといけないってことか?」

虎の式神を撫でながらレオナードが訊ね、ツヤが「当たり前だろう」と返しながら立ち上がる。そして、部下であるヴィンセントとイヅナを見つめた。