妖と人との恋など、本当にあるものなのかはわからない。だが、この話の中でフジとダイダラボッチの間には確かな愛があった。

その後も、ハナエから面白い昔話をいくつも教えてもらい、イヅナたちは眠りについた。



次の日、イヅナたちは昨日巨人が暴れていた山へと向かうことにした。

「何か奴を倒す手がかりを見つけられるかもしれないしな」

そう言ったツヤにハナエは「気をつけてくださいね」と言いながら、おにぎりを握って渡す。イヅナたちにもおにぎりを握ってくれた。

「うまそ〜！」

レオナードが目を輝かせ、「まだ食べちゃダメよ」とイヅナが注意する。それでも信用できないとヴィンセントがレオナードのおにぎりを預かり、山へと出発した。

「結構、ハナエさんの家からあの山は近いのね」

「昨日、ハナエさんの家や周りの人の家が倒壊しなかったことが奇跡だよね」

イヅナとヴィンセントがそう話をし、ツヤが周りを警戒した目で見渡し、レオナードが興味津々といった表情で辺りを見ながら山のふもとへ到着する。