「捕らえろ!」

「あの女は妖をたぶらかし、この村を滅ぼそうとしている!」

しかし数日後、フジが働いている家の者たちが押し寄せ、山に入ったフジを捕らえる。そして、フジは首を斬られて殺され、その家の者がダイヤモンドのネックレスを見て、ニタリと笑う。

「豪華そうな宝石だな。これだけは貰ってやろう」

フジの亡骸をそのまま放置し、家の者たちは帰っていく。そこへやって来たダイダラボッチは、変わり果てたフジの亡骸を見て泣き崩れる。そして、フジの体がこれ以上傷付かないよう優しく抱き締め、獣のように叫んだ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


ハナエの話が終わると、部屋の中がシンと静まり返る。だが、それは気まずいものではなかった。現にイヅナの心は温かく、切ない感情が渦巻いている。

「……そんな昔話があるんですね」

イヅナが言い、ヴィンセントも「作り話だとしても素敵な話じゃないかな」とイヅナを見ながら言った。