「なるほど……。要は金持ちのボンボンってことか……」

レオナードがそう納得したように言うと、「そうだぞ!俺は偉いんだ!」と半泣きになりながら男性が言う。

「俺の名前はムサシ・トヨトミ!この村で一番偉いんだからな!」

いい歳をした大人が半泣きになっている姿を見て、イヅナの心から恐怖心はなくなり、行き交う人から見られる恥じらいが生まれていく。それはツヤたちも同じだったようで、「こいつらに荷物預けて、行くか」とツヤが言っていた。

だがその時、地面がぐらりと大きく揺れる。まるで地震が起こった時のようだ。地震ではないとイヅナたちが気付けたのは、遠くの山から巨大な腕が二本出ているからである。

「ぉぉぉおぉぉぉぉぉおれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇのぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

何かを言いながら、ゆっくりと山の向こうから何かが姿を見せる。それは岩のような皮膚をした巨人だった。

「あれが今回倒す妖か!」

ツヤが声を上げて驚いた刹那、「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と巨人が叫び声を上げながら山に巨大な腕を叩き付ける。すると、地面が激しく揺れ始めた。