ツヤの表情を見て、イヅナは驚いて目を見開いてしまう。隣をチラリと見れば、ヴィンセントも同じような顔でツヤを見ていた。それに気付いていないのか、あえて触れないのか、ツヤはゆっくりと話し出す。

「ケレトはあたしと姉さんの故郷だ。この千年、足を運んだことはないがな。姉さんに逢いたいと思ったんだが、墓があるのかどうかわからないんだ。あのクソ男共はきっと姉さんの遺体をその辺に捨てただろうし……」

そう話すツヤの顔は、とても寂しそうな顔をしていた。鬼にされた時、ツヤは自分を失い暴れ回っており、姉であるカスミ・シノノメの遺体を実験室に置いて行ってしまったのだ。

「馬鹿だな、あたしは。姉さんに命を救われたも同然なのに、その姉さんを見捨てたみたいなもんだからな」

ツヤの赤い瞳が潤んでいく。イヅナが「そんなことないですよ」と声をかけようとした時、「お姉さんは、そのことでツヤさんを恨んでるとは思えません」とレオナードが真っ先に口を開いた。その目は、どんな任務の時よりも真剣なものである。