【完】再会した初恋の彼はチャラくて、イジワルで、ときどき優しい

春歌高校に入部してから早、二週間。





だいぶマネージャーの仕事に慣れてきました。





ゴールデンウィークは合宿も決まって、皆はりきって練習に打ち込んでいます。






「小鳥遊、膝にアイシングしてくれ」






稲葉くんの命令口調は変わらないけど。






アイシングを終えて雅は先輩に頼まれて全員分のドリンクを作りに水道へ向かった。






暑い。今日はこの前よりも気温が高い。






日焼け止め塗っておいて良かった。






早くドリンク作って戻ろう。





「ふぅ...」






最近疲れが出てきている。





暑さのせい?





それとも稲葉くんに付きっきりで仕事をしていたから?
…なんか目眩がしてきた。





これを持って早く戻らないと。





また稲葉くんに怒られる…。






疲れが限界を迎えてついに倒れた雅。





ドリンクが入ったタンクは地面に落ちて中身が流れ出してしまった。





『なら、俺が会いに行く』





『え?』





『今は子どもだから無理だけど大きくなったら・・・』





また、あの頃の夢……。





会いに来て。私、ずっと待っているから。





「.....稲葉くん」





ん…これ?ここはどこ?





確か水道でドリンクを作っていてそれから…。
「やっと気がついたか?」





その声。





「稲葉くん?私……」





「熱中症だ。疲れも溜まってたからなりやすくなっていたって保健室の先生が言ってた」





「そうなんだ。今日暑かったもんね」






それで倒れて…稲葉くんが運んでくれたのかな?






まぁ、お礼くらいは言わないと。





「悪かった」






「え?どうして稲葉くんが謝るの?」






迷惑かけたのは私だし。一体どうして?





「俺がたくさんこき使ったのが原因で、疲れが溜まってお前をこんな目に…。本当にすまない」






ちゃんと反省してくれてたんだ。






再会してからこんなに真剣な稲葉くんの顔、練習以外で見たことなかったな。





「確かに稲葉くんは私をこき使いすぎ。けど、もういいよ。私をここまで運んでくれたんだから。ありがとう稲葉くん」






残っていた。





昔の彼と同じように優しいところが。





本当に優しい人じゃないとここまで運んだり、謝ったりしない。






「あのさ、これからもマネージャー続けてくれるか?」





「うん。ただし、稲葉くん専用じゃなくて皆のサポートしていくからそのつもりで」






「それは困るな」






「ちょっと、なんでよ!?」

ずっとイジワルだったけど、優しいところは変わらないと気づいた今、私は彼にもう少しそばにいることにした。






それが新しい恋の種だとこの時の私はまだ、気づいてなかった。
湖、森、丸太で出来たコテージ!





今日ゴールデンウィーク初日。





私たちバレー部は待ちに待った合宿にやって来ました!!






このコテージは花火絵監督の所有物。毎年ここで合宿場として解放しています。






監督引退したらここに住むんだとか。






それにしても広〜い。





確かこの裏にはバレー用の競技場があるんだよね?





監督そんなところにコテージ買うなんてほんとにバレーが好きなんだな。






「わしと男子たちは一階、女子とマネージャーは二階の部屋じゃ。荷物を置いたら準備をして、一度リビングに集合。皆ケガをしないで楽しい合宿にしような。ふぉっふぉっふぉ!」
男子バレー部と女子バレー部は花火絵監督が一人で指導をしているので合宿も合同。






だから毎年密かにカップルができるんだって。





食事は監督の奥さんと私たちマネージャーが担当。





なのでマネージャーは練習途中でコテージに戻ってきて、夕飯作りの手伝いをします






最終日は他校との練習試合か。二泊三日とはいえ、結構ハードスケジュール。






選手の管理はもちろん、自分の健康管理も怠らないように気合い入れていくぞ…!






「おー!」
「何一人で盛り上がってんだ?」





「うわぁ…!あれ?なんでここに稲葉くんが?ここって女子部屋じゃ」





「あまりに遅いから俺が見にきたんだ。早く行くぞ」





「う、うん」






いけないいけない。





今から集中力切らしているようじゃ、マネージャー失格。切り替えないと…!






コテージの外にはもう、選手やマネージャーが集まっていた。





雅は謝罪をして、自ら練習に使う道具を持つことにした。





これくらいしないと反省とは言えない。今日は率先して仕事をやろう。
競技場に着いた春歌高校バレー部一同。扉の前には他校の生徒たちの姿があった。





「あれが最終日に対戦する高校?」






「そうだ。名門、海氷(かいひょう)高校。長年春歌高校とはライバル関係の高校だ」





「強いの?」





「あぁ。ただ、バレーのセンスはいいが、選手のほとんどは性格が悪い。中には汚い手を使って勝ってこようとする時もある」






汚い手も…。あの人もそんな感じだったな。







何思い出しているのよ!?今は関係ないじゃない。
「ふぉっふぉっふぉ。海氷高校バレー部監督の立冬(りっとう)監督。今年もお会いしましたな」






「これはこれは花火絵監督。まだお元気でしたか。安心しましたよ」






「よく言うわい。お主もわしと対して歳は変わらんじゃろ?」






花火絵監督と立冬監督は学生時代からのライバル。




お互い母校で監督を務めるようになってからもライバルとして戦い続けている。





そんな2人は今じゃ人生の最高のライバルであり、良き友としても交流し、こうして毎年集まってはバレーについて熱く語る。





「どうです?新入部員の調子は」






「まぁまぁじゃな。お主のところはどうじゃ?何やら凄い選手が入部してきたとか」






「そちらの稲葉くんよりはまだまだひよっこですが、将来は期待してもいい部員が入りましてな」






「ほほう。それは練習試合が楽しみですな。ほれ、皆挨拶せい。いくらライバルでも、挨拶は大切じゃからな」