【完】再会した初恋の彼はチャラくて、イジワルで、ときどき優しい

「顔赤い。説得力ないな」




「うるさい!!」



からかわれて怒った雅はぷいっとそっぽを向く。




誰のせいでこんな顔になっていると思ってるのさ。思い出したらまた体温が上がってきた。




「じゃあ話はこれで終わりだな。そうだ、スマホ出せ」




「はい」



スマホだけならいくらでも出します。



数秒後、スマホからピコン!と音がなり、画面にはバレーのユニフォームのアイコンと稲葉 渉の文字が表示された。



「そこは拒まないんだな。よし。これで俺の連絡先が登録された。もしクラス会の時に嫌になったら俺を呼べよ。すぐに迎えに行くから」




「ありがとう」




稲葉くんの連絡先。本来なら自分からお願いするものなのに。




人の考えていることをズバリ当てるんだから。
けど、これだけでも安心する。稲葉くんが近くにいてくれるようなそんな安心感だ。



どうか何事もなく、クラス会が無事に終わりますように。
「小鳥遊さん久しぶりー!」



今住んでいるところの最寄り駅から四駅先の街に集まることになった中学のメンバー。




「お久しぶりです」




敬語になるのも変だけど、何となく話しにくい。





伊達メガネ、家に置いてきたけど変じゃないよね?





部活やっていた頃はずっとコンタクトだったし。





「よぉー小鳥遊さん。ゴールデンウィークぶりだね」




「水谷くん」





相変わらずの作り笑顔。無視むし。





「水谷ずるいぞ。小鳥遊さんと話して。俺だって話したいのに!」
ここにいると息が詰まる。誰も信じられない。その言葉一つひとつが嘘に感じる。




男女合わせて6人か。水谷くん以外、全然名前が思い出せない。



楽しい時間もあったはずなのに、人ってこんな簡単に忘れるものなのね。




そういえば卒業アルバムはどこにいったっけ?きっと両親の寝室にあるんだろう。




私は見ないし。両親が私の中学生の頃の姿を楽しむものとしてあるだけだから必要ない。




「よっしゃー。皆揃ったところでカラオケ行こうぜ!今、学生割引していて食べ放題、飲み放題なんだ」




「いいね。行こういこう」





皆が前を歩く中、私は後ろでのんびり歩いている。




やっぱり私いなくても何も不自由がないな。このまま空気みたいになってやり過ごそう。





「小鳥遊さん!」





と思ってたのに声をかけてくる嫌な奴。それが……





「水谷くん。何か用?」
「皆と話さないの?あいつら結構楽しみにしてたんだぜ?小鳥遊さんと話すの」



あなたと同じように私のことを笑っていた人たちのことなんて知らないわよ。




バレー部の皆といた方が何倍も楽しい……。




「知らないよそんなの。水谷くんが勝手に行くって言ったからこんな事になったんだし。私、途中で帰るから。だから変なこと皆に言わないでね?」





「それはどうしようかな〜。俺のお願い聞いてくれたら考えてもいいけど。それがダメなら話しちゃうかも」





性格悪い。何をするか知らないけど、迷惑だってことをいい加減気づいてよね!?





「何するつもり?」




このトーンを低くして威嚇しても水谷は気にする様子はなく、ヘラヘラと笑っていた。




「それはあとのお楽しみ!」
スマホを手から離さないようにしよう。何かあったらすぐに稲葉くんに連絡できるように。





カラオケに着いたら皆それぞれ飲み物や食べ物を頼んで好き勝手に歌ったり、食事をしている。





私は歌うことなく、ずっとスマホを握りしめていた。隣にはまだ水谷くんがいるし。





「なぁ水谷と小鳥遊さんって付き合ってるのか?」





「はい?」





思わず変な声を出してしまった。どこをどう見たら私たちが付き合ってように見えるのよ!?






はっきり言って迷惑…!
「そんな風に見える?」



ひゃっ!




なに私の肩抱いているのよ!?スマホ落としそうになったじゃない。




「水谷くん離れて…!」





「あー小鳥遊さん照れてる〜。水谷、もっとくっつけ!」





やめて!照れるわけないでしょ!?むしろ寒気がするほどよ!






皆もなんでノリノリなのよ。こっちは気にしないで歌っててよ!







「そういえばさ、中学の時、水谷くんって小鳥遊さんのこと好きだったよね?」






「え?てことは水谷の告白が成功して付き合い出したとか?きゃー!」






女子二人は勝手に妄想して、勝手に盛り上がってるし、男子たちもこっち向いてニヤニヤしてる。
もう嫌…!稲葉くんに連絡をしよう。





震えた手でスマホを操作して、今いる場所を伝えた雅。




あと少しの辛抱だ。もう少ししたら稲葉くんが迎えに来る。それまでこの状況を耐える。





「ん〜まだ付き合ってないんだな。てか俺、中学の時に振られているし。小鳥遊さんには好きな人いるって言うし」





そんな事ここで言うことじゃない。





私は確かにあなたのことを振ったけど。






それが何?もう終わったことなんだから掘り返さないでほしい。





「そういえば小鳥遊さん、前はコンタクトだったのにメガネかけている時期があったよね。あれって何か関係あるの?その好きな人の好みとか?」
どうしてその話になるのかな。





メガネをかけ始めたのはあなた達が私の悪口言って、自分の素顔が嫌になったからなんですけど。





その事すら忘れているなんて、幸せな人達。あぁ…この人達の目も笑った顔も作り物に見えてきた。





何も考えてないで人に言いたい放題。





どうせ高校では猫かぶってるんでしょ?私にしたことを隠して生きて。可哀想な人達。





むしろ私があなた達の過去をこの場で話したいくらい。





「メガネは別に関係ない。あの方が落ち着くのよ」






嫌なことが見えなくなるような感じにね。