「そうだな。雪乃に会う前までは全てがどうでも良かった。別にやさぐれてた訳でもねぇけど、本当に何もかもがどうでも良かった。ただ自由があって仲間がいれば。だから恋とか婚約者なんて一切興味なくて。婚約する相手だって誰でもいいと思ってたが⋯その婚約者を本気で好きになったら、親に決められた会社の為の結婚という事実が反吐が出る程気持ち悪かった」


「⋯⋯」


「それまでは兄貴達を見ても何も思わなかったのに雪乃に会ってから兄貴達のおかしさに初めて気がついた。だから星を見た後、雪乃を送った帰り道、明日俺の気持ちを言うって決めたんだ」


「次の日⋯?」


「なのに次の日からお前は俺を避けるし、会いに行けば拒絶されるしで⋯」


「っ!その日は父から婚約の話を初めて聞いた日で⋯」



まさかのタイミングのすれ違いに何とも言えない気持ちになる。




「ああ。けど俺からしたらいきなり避けられるし拒絶されるしで結構キたんだよ。勘違いしてるって分かっても泣きながら拒絶されたらこっちだって落ち込むんだ」


「⋯すみません⋯、」


「だから迷ってた。気持ちを伝えるかどうか。カッコ悪いけど。────でも、」


「⋯⋯」


「俺がウジウジ迷ってる間にこうやって雪乃が会いに来た」