「風邪引くから早く中入れ」
「千鶴さん」
そう言ってマンションの方に目を向けた千鶴さんに真剣な表情を向ける。
「帰り、気をつけて下さい。本当に」
「ああ」
「本当にいつもより気をつけて下さいね」
「SPごっこが続いてんのか?つーか早く入れ、本当に風邪引くぞ」
「真剣に言ってるんです!」
いまいちちゃんと聞いてくれない千鶴さんに大きな声が出た。
「本当に、本当に帰り気をつけて下さい!」
「⋯」
「お願いですから⋯!」
「雪乃?⋯何かあんのか?」
あまりの剣幕に千鶴さんが戸惑ったような声を出す。
これじゃダメだ。心配かけたらダメだ。