「室長は無責任にサッサといなくなっちゃうし、逃げ出せる人はあとに続いてたけど、私なんかまだ仕事が終わってなくて。巻き添えにされちゃたまらんと、絶対に目を合わせないようにしてさ、ホント大変だったよ。」


「修羅場でしたねぇ・・・。」


その場にいなくてよかったと、友紀は心から思う。


「で結局、そのバトルを最後まで見届けることになっちゃったんだけど。高木さんは『自分だけ全ての仕事から外されるのは納得できない。とにかく業務に復帰させろ。』って言い張り、次長は『仕事がしたければ、自分で探せばいい。君にふさわしい仕事がいくらでもあるだろう。』って答えて、ついに完全にブチ切れた高木さんが『それじゃ、あんたの調査とやらの結論が出るまで、休ませてもらうから。』って言い放って、そのまま帰っちゃった。」


「それで、今日から有休ですか。」


「そういうこと。」


思わず顔を見合わせて、ため息をつく2人。


「で、そっちはどうだったの、昨日は?」


「どんな感じも何も、1日一緒にいましたけど、私のことはほぼ無視です。」


「そうなんだぁ。」


「もっぱら会話の相手は漆原くん。確かに彼が高木さんのアシスタントですから、彼にいろいろなことを聞くのは仕方ないんですけど、でも結局何をしてるのか、何がしたいのか、少なくとも私にはサッパリです。」


友紀の報告を聞いた葉那は


「相当な女嫌いだね。」


そう言って、またため息。


「そうなんですかね?まぁ女は信用ならんみたいなことは、言ってましたもんね。」


「バツイチらしいよ、あの人。」


「えっ、結婚してたことあるんですか?」


左手に指輪がなかったから、独身なんだろうとは思っていたが、まさか結婚経験者とは思わず、友紀は驚く。


「そうみたいよ。でもあれじゃ、奥さんに逃げられても仕方ないでしょ。」


「というか、よくあの人と結婚しましたよね。その奥さん。」


などと言いたいことを言っていた2人だったが、ふと友紀は、今朝、滝がポツリと漏らした


「高木は既婚者か・・・。」


という言葉を思い出していた。


(自分がバツイチだから、結婚してる高木さんに嫉妬して、辛く当たってる・・・?まさか、ね・・・。)


さすがにそんな幼稚なことはな、と友紀は自分の考えを慌てて否定した。