そんなこんなで日々が過ぎて行く。葉那は相変わらずの嘆き節だし、漆原の方も


「杉浦先輩、俺そんなに先輩の足引っ張ってましたかね?」


ある時、思い詰めた表情で、友紀に尋ねて来た。


「ううん、そんなことないよ。私だっていきなり営業担当って言われて、右も左もわからなかったから、漆原くんのこと、頼りにしてたよ。」


という友紀の答えに


「そうですよね。なのに、なんでいきなり内勤専任にされちゃうんですか?俺、営業好きなんですよ。先輩、なんとか先輩の下に戻してもらえるように、次長に掛け合って下さいよ。」


縋るように訴えてくる。しかしこればかりは、友紀にはどうすることも出来ない。嘆く先輩と後輩を励まし、なだめることしか出来ないのだ。


それでも思い余った2人は、滝に直訴に及んだみたいだが


「俺と室長で決めたことだ。それにこの仕事がいい、この仕事が嫌だなんて、子供みたいなことを言ってるんじゃない!」


いつもにも増して、厳しい態度で一喝されて終わったようだった。


(そう言えば・・・。)


ふと友紀は思う。最近、滝が自分に素っ気ないと。


(三友さんとの契約が済んで、差し当たって、現在私の抱えている案件に目ぼしい進展がないのは確かだけど、葉那さんの様子を聞いて来たりとか、話さなきゃいけないことはあるはずなんだけど・・・。)


もともとお世辞も愛想もなにもない人物だが、滝に呼びつけられる回数が、目に見えて、他も室員より少ないような気がする。


(ひょっとしたら、次長の中で、私はもういなくなる奴、いないものとカウントされてるのかな・・・?)


先日の葉那の言葉が甦ってきて、友紀は胸をつかれる。


(私、本当に異動なのかな・・・?)


まさかという思いの一方、そう考えれば辻褄が合っちゃうと我ながら思えるのも確かだ。