そしてまた、週が明けた。


「うわぁ、なんか大変。」


前週末に滝から受けた指示に従い、友紀は葉那を伴い、取引先を訪れていたのだが、辞去して建物を出た途端、葉那がそう言ってため息を吐く。


「私は今まで商品部とか身内相手の仕事が多かったから・・・。それがいきなり営業なんて、荷が重いなぁ。」


「でも私だって、ついこの間までは事務担当ですよ。」


「友紀は店舗での接客経験があるじゃん。私はいきなり本社配属だったし、第一大きな案件2つも立て続けにまとめた友紀とは、才能が違うよ。」


「ですからそれは、ラッキ-と次長がいろいろお膳立てして下さった賜物ですって。」


そんなことを言い合いながら、車に乗り込んだ2人。


「でもなんで急にこんなことになったのかなぁ?」


ハンドルを握りながら、葉那が言い出す。


「はい。私もずっと考えてるんですけど・・・。」


思案顔で答える友紀に


「やっぱり、友紀がいなくなっちゃうのかな?」


葉那が不安げな声で言う。


「まさか、次長も室長も交代したばかりでまだ半年も経ってないんですよ。私は本当に営業に回ったばかりですし、退職した高木さんの欠員も埋まってない状態で、まして定期異動の時期でもないこんなイレギュラ-な時に・・・。」


友紀はあり得ないといわんばかりの口調で答える。


「でもジュニアがわざわざ、ウチのオフィスに自ら足を運んで来て、その直後にこれだよ。あんた、ジュニアに見初められたんじゃない?」


「見初められたって・・・どういう意味ですか?」


「もちろんこの間のプレゼンを見て、才色兼備の杉浦友紀ちゃんにジュニアが惚れ込んで。それで室長に直談判に来たんだよ。『杉浦くんを是非私の下にいただきたい』って。」


「そんな・・・ありえません!」


なぜか怒ったような口調で、友紀は否定するが


「でもそう考えれば、全部辻褄が合うよ。確かに、友紀が言った通り、今のウチの状態で、友紀が抜かれるなんて、普通考えられないけど、他ならぬジュニアからのご指名じゃ、人事部も室長もうんって言うしかないよ。友紀、凄いじゃん。」


葉那は顔を輝かせている。


「葉那さん・・・。」


「ひょっとしたら、玉の輿だよ、友紀。」


「なっ・・・。」


言葉を失う友紀を尻目に


「でもさぁ。それにしても、友紀の後釜は元々のアシスタントのウルでいいじゃん。なんで私なの~?」


とまた嘆き出す葉那。そんな先輩の言葉には答えず、友紀はムスッとした表情で前を向いた。