地面に叩きつけられると思って身構えた身体は、なぜか上からふってきた男の人を下敷きにしていて、痛みから免れている。



「いててて……はっ! ごめんね? 大丈夫? 怪我してない!?」



 少し高めの透き通る声で心配そうに、下から覗き込んできた。



 ――この声、どこかで……?



 聞いたことがあるような気がする。私は大丈夫ですと口に出そうとして、その声の主を見た時、身体が固まった。



 ――嘘でしょ?



 被っていたキャップは、今の勢いで外れたのか少し先に落ちている。


 そして、私の視界にはふわふわの栗色の髪が飛び込んできた。次に見たのはぱっちりと大きな二重の瞳。


 私はこの人をよく知っている。


 普段、顔出しはしていないけれど、私はライブやイベントには何度も行っているからこの顔を忘れることはない。


 目に焼き付いているこの人のイメージカラーはオレンジ。見間違いなはずがない。



「レイヤくん……?」



 私の下には、さっきまで話していた最高の推しがいた。