ちゃんと3次元で生身の身体がある。

 だからこそこんなスキャンダルが出てしまうのだ……。というのは分かっているし、実際に他の芸能人のゴシップ記事なんかも見ている。


 だけど、いざ自分の推しがそうなってしまうとやはりショックしかない。



「ごめん由羽……今日は帰る」


「おけ、またね」



 こういう時の割り切りがいいのは、さすが由羽としか言いようがない。


 私は自分の分の食べ物代を置いて、もう少しいるという由羽を残してファミレスを出た。



 ――レイヤくんが恋愛……。

 ――レイヤくんが知らない女に……。



 私の頭の中にはそれしかない。家に向かってはいるけれど、その足取りはとても重い。


 そして、家に向かうために絶対通らなくてはいけない長い階段にさしかかったときだった。



「あっ! やばい……っ」



 そんな声が頭上から降ってきたのだ。


 えっ? と見上げた時には既に遅く、私に強い衝撃が当たるとともに、視界がぐるりと回った。



「いっ……たくない?」