「…星野(ほしの)、変な声出すな。やりずらい」

「ごめんなさい」

 でも冷風、気持ちいい。

「思い出すなぁ。(のぞむ)先輩のこと」
「仕方ないねって」
(のぞむ)先輩も夕日(ゆうひ)に頼まれて、こうやってドライヤーかけてたっけ」
 三月(みつき)くんが懐かしがりながら言う。

(のぞむ)先輩?」
 私は聞き返す。

羽鳥望(はとりのぞむ)先輩」
「2つ上の先輩で仲良かったんだけど高校辞めちゃってさ」

(しょう)
 夜野(やの)くんが止めると、

「…ベラベラ話てんじゃねぇよ」
 月沢(つきさわ)くんが怒りを交えた声で言う。

「しゃあーせん」
 三月(みつき)くんは頭を下げて謝った。

 月沢(つきさわ)くんが怒るなんて…。
 よっぽど大事な先輩だったんだろうな。

「…出来た」
 月沢(つきさわ)くんはドライヤーの電源をオフにする。

月沢(つきさわ)くん、ありがとう」
「これで帰れます」
 私は床から立ち上がる。