「…じゃあ、かけるぞ」
 ベランダから居間に戻って食べ終わった後。月沢(つきさわ)くんが私の髪にドライヤーをかけた。

「これで少しは香り消えるだろ」

 私は床に座っていて、ゴーッとドライヤー音が部屋中に鳴り響く。

 温風モードで熱い……。

「ドライヤー前に消臭スプレー私達がかけたし」
「これでお兄ちゃんにバレずに済むね」
 夕日(ゆうひ)ちゃんが右手の親指を立てる。

「みんな、ありがとう。ラインも」

 友だち
 夜野凜空(やのりく)
 三月翔(みつきしょう)
 姫浦夕日(ひめうらゆうひ)

 カップラーメンを食べてる時にラインのID交換をして、『お兄ちゃんに黙って出て来たから香りでバレたらマズイ』って言ったら、みんな協力してくれた。
 名前は月沢(つきさわ)くんにだけ知っててもらいたくて言えなかったけど…。

 ドライヤーのスイッチが切り替えられ、冷風が背中に当たる。

「ひゃっ」