「ねえ、あれが冬の大三角形?」


空に思いっきり手を伸ばして、人差し指で明るい星を指す。それを頂点として周りに光る星を繋いで三角形を描いた。


「それじゃないと思うけど」


心を躍らせていたわたしを知ってか知らずか、冷たく言い放つ。ショックを受けるわたしに、「冬の大三角形が見えるのは南のほうだよ」と更なる追い打ちをかけてくる。

なんだ、せっかく見つけたと思ったのに。期待をふくらませていた心はみるみるうちに萎んでいく。


「天体系好きならそれくらい勉強しろよ」

「わたし勉強って言葉きらーい」

「知ってる」



寝転がれば空しか見えないここは、余計なものが一切なくて、きれいなものしか映らないからすきだった。家の屋根の上だから少し痛いのは難点だけど、それでも、いつしかここは私とセナの秘密基地になっていた。


この世界がきれいだけでできていないってこと、18年も生きてきたんだ。そんなこと知ってる。

近くにコンビニもなければ電灯もない。夜になるとこの街は人工的な光が消えて真っ暗になる。田舎すぎてたまに不便だと感じる場面もあるけれど、これくらいがちょうどいいような気もする。