お兄様はそう言うと、顔を歪めて笑った。

私を蔑むような目が、分かっていたはずなのに信じられなくて、固まってしまう。




「どうすれば恩を感じられるのかな。お2人を殺したのは、他でもない、千化なのに」


「……え?」




千化?




「そんな驚いた顔をすることはないだろう? 白蓬家の当主夫妻を殺し、息女を連れ去り、その上李璃の婚約者である獅紋を、李璃に殺すよう命じた極悪人の名前だ」


「う、そ……そん、な……そんな、はず……っ!」




ふるふると首を振り、手錠があることも忘れて頭を抱えた。


ボスが、お父様とお母様を殺した殺し屋?


だって、ボスは親に捨てられた私を拾ってくれて、私に住む場所をくれて、私を愛してくれて。


魔法だって教えてくれた。

人の殺し方を教えてくれたのは、普通じゃなかったかもしれないけど。