「その時、1人だった?」
「う、……っ」
悲しくて、悲しくて、そのままの調子で口を滑らせてしまいそうになり、必死に理性を手繰り寄せた。
お兄様が知りたいのは、ボスのこと。
あの後、ボスに拾われたなんて言っちゃいけない。
私はお兄様から目を逸らして俯き、感情に流されないように嘘を吐く。
「1人、だった……」
「……嘘はいけないな。千化がいたんだろう?」
「っ、違う……私は、1人だった……」
「どんな話をしたんだい? どう唆されたら、千化の下で殺し屋になるのかな」
「唆されてなんかない! 私は、ボスに恩返しする為に……っ!」
聞き捨てならない言葉に、思わず顔を上げてお兄様を睨んだ。
でも、お兄様を慕う心がブレーキをかけて、勢いを削がれる。
「へぇ、恩返し?」