あっさり引いたことに驚いて、動揺を表に出さないように気をつけながら、お兄様の意図を考えた。
急に話題を変えたのは、私の警戒を解くため?
「李璃はどうして失踪することになったのかな?」
「……分からない」
「李璃、顔を上げて。俺の目を見ながら話せるよね?」
「っ……」
お兄様の顔を見て、冷静でいられる自信が無い。
だからずっと俯いていたのに、お兄様から要求されて、恐る恐る顔を上げた。
金色の髪。
緑色の瞳。
親しみやすい笑顔。
じっと私を見つめて、お兄様は微笑みながら尋ねた。
「あの日の夜、何があったのか、お兄様に教えて?」
「……夜中に、目が覚めて……お父様と、お母様の、お部屋に行って……ベッドの横に、誰かがいて……」
目の前に、あの頃親しかった人がいるからか、昔に戻ったような感覚に囚われる。